Knowledge /独創的なデザインが印象的なクラフトビール醸造所|Beavertown Breweryのマーケティング戦略
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Beavertown Breweryについて
Beavertown Breweryは、ロックバンド「レッド・ツェッペリン」のボーカル「ロバート・プラント」の息子「ローガン・プラント」によって、2011年にイギリスのロンドンで創業されたクラフトビール醸造所です。
ビールの原料の1つである「ホップ」を使用して作られるビール「IPA」や、季節限定のビールなどを販売しています。
2018年にオランダの世界的なビール醸造会社であるハイネケンがBeavertownの少数株式を取得し、2022年9月に完全所有権を取得しました。

本記事では、
- Beavertownのマーケティング戦略
- Beavertownが買収されるまでのストーリー
を詳しく紹介します。
Beavertown Breweryの看板商品
Beavertown Breweryは、個性的でクオリティの高いビールを提供するクラフトビール醸造所で、様々なスタイルのビールを提供しています。ホップの豊かなアロマとフレーバー、クリアな見た目、そしてドライな後味が特徴で、クラフトビールに興味を持つ愛好家や、新しい味わいを求める若者層をターゲットとしています。
特に、IPAスタイルのビールは同社の代表的な製品の1つです。IPAとは、「India Pale Ale」の略で、もともとは長距離輸送に耐えるために、高いアルコール度数とホップの苦味を付けたビールを指します。現在では、ホップの香りと苦味が特徴的なビールのカテゴリーとして広く知られています。

Beavertownの看板商品でもある「Neck Oil」は、Session IPAというサブスタイルに分類されます。Session IPAは、通常のIPAよりもアルコール度数を低く抑えた(4〜5%程度)、飲みやすいタイプのIPAです。ホップの香りは豊かですが、苦味は控えめで、軽やかな飲み心地が特徴です。

もうひとつの看板商品「Gamma Ray」は、American Pale Aleというスタイルです。American Pale Aleにはアメリカ産のホップが使用されており、柑橘系やパイン、フルーツなどの香りが特徴的なビールです。色は淡黄色から琥珀色でクリアな見た目をしており、苦味は中程度からやや高め、キレのある飲み口とドライな後味を楽しめます。
これらのビールはクラフトビール愛好家から高く評価されており、Beavertownの代表的なビールとして知られています。
Beavertownの販売箇所
Beavertownのビールは2024年4月現在、イギリス国内を中心に販売されていますが、海外でも徐々に存在感を高めつつあります。
イギリス国外ではヨーロッパ諸国や北米、アジアなどでも販売されており、日本でもクラフトビール専門店やオンライン販売を通じて入手可能です。
今後は、ハイネケンとのパートナーシップを活かしながらさらなるグローバル展開を図っていく予定です。
Beavertown Breweryのマーケティング戦略
Beavertownはマーケティングにおいて、独創的なデザインやユーザーとの親睦を深める活動など、多面的な戦略を展開しています。
本章では、Beavertownが実施したマーケティング戦略をいくつか紹介します。
1.独創的で統一感のあるデザイン戦略

Beavertownのビール缶には各ビールのキャラクターを表現した鮮やかな色彩とポップなイラストが描かれており、ビールの個性を視覚的に伝えると同時に、店頭で強い存在感を発揮しています。
この独創的なデザインは、クラフトビールに親しみのある若い世代を中心に支持され、ブランドの認知度向上に大きく貢献しています。
缶のデザインは定期的に更新され、季節限定ビールやコラボレーション商品などでは、限定デザインが描かれることもあります。これにより、消費者に対し常に新鮮な印象を与え、興味を引き続けることに成功しています。
同社の独創的なデザインは缶だけではなく、WebサイトやSNS、その他の販売物など様々なところで展開されています。このような統一感のあるデザイン戦略は、ブランドイメージの構築・浸透に効果的です。
同社の独特でユニークなデザインは、ブランドのコンセプトでもある「creativity(創造性)」を体現しており、同社のマーケティング戦略の中核をなすものと言えます。
ビールの品質とともに、デザイン性の高さがBeavertownを他のクラフトビールブランドと差別化する重要な要素となっていると言えます。
2.イベントやコラボレーションを通じたプロモーション活動
Beavertownはマーケティング戦略の一環として、イベントやコラボレーションを積極的に活用しています。
1.自社主催のイベント
Beavertownは、醸造所見学ツアーやビールの試飲会、フードペアリングイベントなど、自社主催のイベントを定期的に開催しています。これらのイベントを通じて、ファンはBeavertownのビールや文化に直接触れることができ、ブランドとの絆を深めることができます。また、イベントの様子はSNSでも発信され、口コミでの拡散効果も期待できます。
2.他のブランドやアーティストとのコラボレーション
Beavertownは人気バンドとのコラボビールの製造や、アートイベントでのビール提供なども積極的に行っています。このようなコラボレーションは、双方のファン層に訴求することができ、新たな顧客の獲得にも繋がります。

実際、同社はアメリカのロックバンド、Queens of the Stone Ageとミュージックビデオでコラボしました。ミュージックビデオはアニメーションで制作され、Beavertownのビール「Neck Oil」の缶のデザインに基づいたシュールなビジュアルが特徴です。
この取り組みにより、バンドのファン層へのリーチに成功しました。また、通常のビール広告とは一線を画す魅力的かつ斬新なブランディングであり、クラフトビール業界における地位をさらに高めました。
3.複数のチャネルでの大規模な広告展開

2022年、Beavertownはイギリス主要都市の屋外広告を中心に、ソーシャルメディアやYouTubeでのデジタル広告など、複数のチャネルで大規模な広告を展開しました。この大規模なキャンペーンは、同社のブランドイメージをさらに強化し、新しい顧客層へのリーチを目的としたものです。
広告に描かれたデザインにはグラフィックノベル(コミック)のスタイルが取り入れられ、同社の特長的なビジュアルを大胆に誇張したインパクトのあるアートワークが繰り広げられました。
また、キャンペーンでは新しいブランドメッセージ「Out of this World Beer. Drank on Earth.(この世界のビール。地球で飲まれる。)」が導入されています。これは、同社のビールが高品質かつ革新的であること、そして誰もが楽しめるものであることを伝えるためのメッセージです。
クリエイティブな表現とマルチチャネルでのプロモーションを組み合わせることで、同社はより多くのユーザーにその魅力を広め、クラフトビール市場における存在感を強化しました。
ハイネケンに買収されるまでのストーリー

Beavertownは2011年に設立されて以来、急速な成長を遂げ、わずか数年でイギリスを代表するクラフトビール醸造所の1つに成長しました。しかし、事業拡大にはより大きな投資が必要であり、資金調達が課題となっていました。
そのような状況の中、2018年に大手ビールメーカーのハイネケンは約4000万ポンドでBeavertownの少数株式を取得しました。ハイネケンはクラフトビール市場への参入を狙っており、Beavertownの高い成長性とブランド力に魅力を感じていました。
この出資により、Beavertownは生産設備を拡大し、よりスピーディかつ大規模な事業展開が可能になりました。また、新たな醸造設備の導入により、品質の向上と安定供給の実現にも成功。ハイネケンの販売網を活用し国内外での販路拡大にも勢いがついた結果、Beavertownの売上高は2018年から2020年にかけて1270万ポンドから3500万ポンドへとほぼ3倍に増加しました。
そして2022年9月、ハイネケンはBeavertownを完全子会社化しました。この買収に対し、クラフトビールファンの間からは「大企業化による品質の低下」や「独自性の喪失」を懸念する声もありました。これに対し、Beavertownの創業者であるローガン・プラントは、「ビーバータウンのDNAは変わらない」と宣言。ハイネケンの経営資源を活用しつつも、これまで築き上げてきたブランドアイデンティティや醸造へのこだわりは守り続ける方針を示しました。
なぜハイネケンは最初から完全買収しなかったのか
2018年にハイネケンがBeavertownの株式の一部を買収したものの完全買収には至らなかった理由は明かされていません。しかし、通常大企業が完全買収を行わず少数株を取得する場合、以下のような理由が考えられます。
■段階的な投資戦略
完全買収を行う前に少数株主となり、その企業のビジネスや市場を評価することが一般的です。これにより、大企業側はリスクを最小限に抑えつつ、ビジネスの動向をより深く理解することができます。
■財務戦略
完全買収には高額な投資を必要とするため、財務的な負荷を分散する意味で段階的な投資を選ぶケースも少なくありません。
■経営スタイルや企業文化を確かめるため
多くのクラフトビール醸造所の経営者は、ただビールを製造するだけでなく、新しいフレーバーや醸造方法を試すことに情熱を持っています。そのため、他の一般企業とは異なる企業文化や経営スタイルを展開しているケースも多い傾向です。
そのような業界の状況も加味し、大企業が中小企業を完全に買収する前に、その文化や経営スタイルが大企業のものと適合するかを確認することがあります。
上記のような理由から、ハイネケンは2018年には完全買収しなかったものの、2022年には子会社化に成功しており、最初の投資は成功したと判断したのだと考えられます。
まとめ
本記事では、独創的なデザインが印象的なクラフトビール醸造所であるBeavertown Breweryのマーケティング戦略やハイネケンに買収されるまでのストーリーを紹介しました。
同社は、質の高い様々な種類のビールを提供しクラフトビール愛好家からの支持を得ただけではなく、ユニークなデザインや斬新なアイデアによるプロモーションを実施し、人々がブランドに引き付けられるような仕掛けを実施しています。
これらの戦略的な取組みは、クラフトビール業界にとっても大きな意味を持つと言えるでしょう。
Beavertownとハイネケンとの協業という新たなモデルは、クラフトビールの可能性をさらに広げていくのか。その行方が注目されています。
<参考記事>
The strategy behind Beavertown Brewery’s success
How this London brewer landed a branding deal with Queens of the Stone Age
Banding Together: The Story of Beavertown Brewery
Beavertown Brewery Beams Down to Earth with a Quirky Campaign
Beavertown Brewery Journeys to a New World with Latest Summer Campaign
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