Knowledge /企業の情報を横断して検索できるAIシステム|GleanのPMFの見つけ方
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Gleanについて
Glean Technologiesは2019年に元Googleの著名なエンジニアArvind Jain氏によって米国で創業された、企業向けAI検索システムを開発・提供している企業です。
同社が開発している製品「Glean」は、職場で必要な情報を迅速かつ正確に見つけ出し従業員の生産性やエンゲージメントを高めるための高度なAI検索システムで、現在、すでに100社を超える企業で導入されています。
Gleanの検索窓に知りたいことを入力すると、Microsoft365やGoogle Workspace、Slack、Salesforceなどの企業で利用しているSaaSシステムを横断的に検索し、瞬時に知りたい情報を探し出すことができます。
また、「KnowWho」という機能では検索した事柄について詳しい従業員が誰かを教えてくれるため、情報だけでなく誰に聞けばよいのかを把握することもできます。
日本市場においては、販売代理店である株式会社アシストとの提携を通じて進出しています。
資金調達の面においては2022年5月、シリーズCの資金調達ラウンドで1億ドルの調達に成功しました。
さらに、2022年末時点での生成AIスタートアップの企業価値ランキングではトップ5にランクインし、企業価値10億ドル(約1000億円)以上で未上場のユニコーン企業として評価されています。
この評価額は、同社が提供するクラウドベースの企業検索プラットフォームが市場に与える影響と将来性を反映してると言えるでしょう。
Gleanを開発したきっかけ
Gleanが開発されたきっかけは、創業者 Arvind Jain氏が所属していたスタートアップ企業「Rubrik」のチームが直面していた問題から生まれました。それは、Rubrik自体が急速に成長する中、従業員の生産性は同じペースで伸びていない、ということです。
その原因を調査した結果、最大の問題は企業内で情報が分断されており、情報を探すことが難しいためであると分かりました。そして、この問題は他の多くの企業にも広く存在する課題であることに気づき、Jain氏は企業内でのナレッジの断片化という問題を解決する使命に乗り出しました。
直面した課題
「Glean」を開発する上で直面した主な課題は、企業内で断絶されている個々の情報やナレッジを1つのシームレスでパーソナライズされた情報にどのように統合するかということでした。
また、昨今のSaaS時代において、企業は複数のアプリケーションやシステムをまたいで業務を行っています。しかし、それぞれのシステムに存在する情報は各プラットフォームに分散されており、アクセス制限によって管理されています。
Jain氏はこの課題に対し、人気のあるSaaSアプリケーションを接続できるシステムを構築し、企業内のすべての情報やコンテンツを検索システムに取り込めるような開発を行う必要があると考えました。
課題へのアプローチ
Jain氏は、企業内で情報が分散している問題に対し、「Glean」というAIを用いたシステムを開発します。
開発する上で、「Glean」の検索システムは検索結果が各ユーザーにパーソナライズされたものであることを保証する必要がありました。この問題を解決するには、ユーザーのクエリに正確な回答を提供しながら、データアクセス制御を理解できるシステムの構築が必要です。そこで、テキストの深い意味を理解し検索結果をより正確なものにするために大規模言語モデル(LLM)を使用し、検索結果の質を向上させることに成功しました。
また、LLMを使用することで、Gleanは「セマンティック マッチング」を可能にしています。「セマンティック マッチング」とは、検索システムが自然言語のクエリ、つまり人が日常会話で使うような自然な表現を理解し、関連する情報を見つけ出す技術です。
従来の検索エンジンでは、特定のキーワードやフレーズを入力する必要がありました。
しかしセマンティックマッチングが利用できるようになると、ユーザーは質問を会話表現のまま入力できます。
例えば、従来のキーワードベースの検索では、「東京の観光スポット」のように、具体的なキーワードを入力する必要がありました。しかし、セマンティックマッチングを採用している検索システムでは、「東京でおすすめの観光はどこですか?」というような自然言語の質問でも適切な結果を返すことができます。
この技術のメリットは、ユーザーが検索したい内容の正確なキーワードや専門用語を知らなくても、自分の言葉で質問できる点にあります。これにより、Gleanはユーザーのより直感的でユーザーフレンドリーな検索体験を可能にしました。
LLMを使用する上での課題
LLMはユーザーの検索体験を大きく向上させる技術ですが、一方でAIが実際のデータや事実に基づかずに不正確な回答を生成したり、誤解を招く表現を生成したりする恐れがありました。特にエンタープライズ検索では、提供される情報の正確性が非常に重要です。
そのためGleanはLLMの使用に際し、単にインターネットのデータに基づいてトレーニングされたモデルに依存するのではなく、「ハイブリッドアプローチ」を採用しました。ハイブリッドアプローチとは、1つの技術のみを単体で用いるのではなく、複数の技術を組み合わせて使用することを指します。Gleanは検索結果が特定の組織のコンテキストやニーズに合わせて最適化されるよう、LLMの一般的なナレッジに加えて、特定の組織やユーザー固有のデータを組み込みました。
このように、LLMの高度な言語処理能力と組織固有のナレッジを組み合わせることで、より効率的で正確な検索体験を提供できるようになりました。
Gleanの販売戦略
Gleanの戦略はいたってシンプルで、主に大企業や組織に対し直接製品を販売するエンタープライズセールスモデルでの販促活動が行われました。
昨今、AIスタートアップ製品の多くは製品自体の価値とユーザーエクスペリエンスを中心にビジネスを拡大するアプローチ戦略を実践している企業が多い傾向です。
しかしGleanは製品主導の成長戦略よりも、企業の内部プロセスやセキュリティポリシーに合わせた慎重な製品展開を重視しました。
PMF(Product Market Fit)*の見つけ方
Gleanは、販売を開始してからすぐに市場に受け入れられたわけではありません。
企業のナレッジ管理と検索を効率化するという発想は画期的でした。しかし、多くの企業は既存のプロセスやシステムの変更に慎重な姿勢を示していました。特に、セキュリティやプライバシーに関する懸念もあったことから、新たなソリューションの導入には時間がかかりました。
そこで、Gleanは市場へのアプローチにおいて、個々のユーザーではなく企業のCIOや技術チームと直接協力し、彼らのニーズに合わせた製品を提供する方法を取りました。その結果、セキュリティとプライバシーに関する懸念を解消でき、各組織の方針に準拠した製品展開が可能となりました。
また、Gleanの創設者であるArvind Jain氏の経験とエキスパートとしての背景が、顧客の信頼を得る上で大きな役割を果たしました。
*PMFとは、自社製品が市場に適合し、顧客に受け入れられている状態を指す言葉です。
付加価値の提供
Gleanは製品開発において、ユーザーのフィードバックを重視しました。市場調査やパルスサーベイを通じて得られた意見を製品に反映させることで、ユーザーが抱えていた問題を解決できる製品提供に成功します。このような取組みが評価され、企業内での情報検索とナレッジ管理の問題に直面していた多くの組織からの関心を引き、市場での受け入れを進めることができました。
また、AIと機械学習の最先端技術を活用し、企業のナレッジシステムと従業員を繋ぐデータ構造である「ナレッジグラフ」を構築しました。ナレッジグラフの活用により、企業は従業員に対し、より関連性の高い情報を提供できるようになり、意思決定のスピードと質を向上させることが可能です。また、情報の見つけやすさが改善され、従業員の生産性向上にも寄与します。
上記のような独自の付加価値を提供する取組みにより、Gleanは市場での存在感を高め、エンタープライズ検索とナレッジ管理分野における重要なプレーヤーとなりました。
Gleanの利用に際し、AIを使用する上でネックとなる利用者側でのチューニング作業も必要なく、すぐに利用開始できるようになっています。そのため、システムの実装から運用までにかかるコストを大幅に削減でき、高品質なシステムを低価格かつ短期間で利用できると、多くの企業から高評を得ています。
Gleanの成功要因
Gleanの成功には、以下の2点が大きく起因しています。
- 先進的な技術開発能力や業界特有のニーズに合わせたカスタマイズオプションの提供
- ユーザーインターフェースが直感的でわかりやすく、ユーザーが簡単に情報を探し出せること
1点目について、Gleanは市場での差別化を図るために、他社製品と比較して高度なセキュリティ機能の提供や独自のアルゴリズムによる検索精度の向上に注力しており、特にセキュリティに敏感な業界における顧客獲得に成功しています。
2点目については、製品提供後も、ユーザーがより効率的に情報を検索できるように、検索インターフェースを改善したり、特定の業界特有の要求に応える機能追加を行ったりしています。
例えば、検索ワードが全く同じであったとしても表示される結果はユーザーの所属する組織や職種、役職によってパーソナライズされ、異なる結果が表示される仕様となっています。
このような取組みにより、製品は継続的に進化し、顧客の満足度を高めることに成功しています。
Gleanが考えるナレッジ管理とソフトウェアの未来
AIとLLMの進化により、ナレッジ管理ソフトウェアは単に文書の保存とアクセスに重点を置くものから、発見・検索・インテリジェントな支援を含む包括的なソリューションへと進化しています。
Gleanは、AIを活用したシステムが仮想アシスタントとして機能し、組織のナレッジを深く理解し、ユーザーの質問に対して正確な回答を提供する未来を目指しています。AIがすべての文書を読み、すべての会話に参加し、広範な記憶力を持つ専門家のように機能することを想像しているのです。
まとめ
Gleanの成功は、顧客中心のアプローチとテクノロジーの高度な統合によるものであり、これにより同社は市場での競争力を大幅に高めることができました。また、顧客ニーズに対しきめ細かく対応することで、Gleanは市場でのニッチな領域を確立し、高い顧客満足度を達成しています。
ユーザーが本当に求めるものは何なのかを的確に理解し、必要な製品を提供し続けることで顧客との強い関係を構築し、持続可能な成長を実現しています。
<参考記事>
The Success Story of Glean: Revolutionizing Enterprise Search with AI
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