「本当に会議室でディスカッションしているみたいですね」
オフィスの個室でAIと対話しながら画面を組み上げていると、代表の古賀からそう声をかけられました。進めていたのは、社内のGoogle Driveに散在する膨大な画像素材を、自然言語で瞬時に検索可能にするシステムの開発です。
はじめまして。2026年10月にAnsatzへ参画した古屋です。
私はいわゆる“非エンジニア”です。しかし、入社からわずか2日後には、この画像検索システムのプロトタイプを稼働させ、社内での実証運用を始めていました。
本記事では、非エンジニアがAIエージェントを駆使して現場課題をいかに超高速で解決・実装したのか、そのプロセスと実践的な運用の工夫をお伝えします。

ビジネス推進の手段として向き合ってきた、AIによるプロトタイピング
改めて、私のバックグラウンドを簡単にお話しします。
これまではビジネスサイドを中心にキャリアを歩んできました。22歳でオンライン英会話スクールを創業して7年間経営したのち、前職では英語学習アプリのSNSマーケティングを担当。1年でフォロワー10万人規模までグロースさせるなど、一貫して事業の立ち上げとグロースに携わってきました。
テクノロジーを実務に組み込む転機となったのは、1年ほど前にClaude CodeをはじめとするAIエージェントツールに触れたことです。「自然言語で要件を伝えることで、Webサイトや業務アプリを即座にプロトタイプ化できる」というスピード感に可能性を感じ、以後は複数ツールの特性検証やプロンプト設計、自律型AIの協調運用に先行投資を重ねてきました。
「ビジネスの課題を素早く特定し、AIを駆使して現場主導で解決する」
このスタンスとこれまでの事業経験を評価され、2026年10月にAnsatzへ参画。入社直後のランチで代表の古賀とAI活用の可能性をディスカッションしたことをきっかけに、今回の「画像検索システム」の実装プロジェクトが即座に動き出しました。
「画像探し」という時間の食い虫
代表の古賀からまず相談されたのは、マーケティング支援の現場で日常化していた「素材探しの工数肥大化」という課題でした。
Ansatzでは、クライアントの商品写真や店舗素材など、日々膨大なビジュアルを扱います。しかし、それらは案件や時期ごとにGoogle Drive内の複数フォルダに細かく分散して格納されていました。目的の1枚を探すためにフォルダ階層を行き来し、プレビューを開いては閉じを繰り返す——。一人ひとりの時間はわずかでも、組織全体で見ればクリエイティブ業務の初速を確実に削ぐ「時間の食い虫」となっていました。
そこで立てた仮説が、「マルチモーダルAIに写真の内容を解析させ、自然言語(『コーヒー』『店内』『夕方』など)で横断検索できる仕組みを作れば、フォルダ構造に依存した探索コストをゼロにできるのではないか」というアプローチでした。
既存基盤を活かした設計と、データセキュリティに基づくPoC設計
開発にあたり重視したのは、「既存の運用フローを極力壊さず、最小工数で最大の効果を出す」ことです。
AIと要件を詰める中で、以下のアーキテクチャ方針を即座に決定しました。
- ストレージの維持:元の画像データは既存のGoogle Driveから動かさない(現場の移行負荷をゼロにする)
- 軽量なメタデータ管理:写真のURL、AIが生成した説明文、タグ情報をスプレッドシートで一元管理する
- 人とAIのハイブリッド運用:AIが写真から自動抽出したタグに対し、人間がUI上で修正・追加を行えるレビュー設計にする

ここで最も慎重に判断したのが、データセキュリティとコンプライアンスです。
AIの学習に利用されない設定を施しているとはいえ、クライアントからお預かりした重要な画像資産を、事前の許諾や検証なしに外部APIへ送信することは許されません。
そこで本プロジェクトでは、まずAnsatzが自社運営する実店舗「de.coffee」の画像素材のみを用いたPoC(概念実証)として開発を進めるルールを徹底しました。
モックアップファーストで進める「共通認識」の確立
入社2日目の午前、まず着手したのはコードの記述ではなく、モック(UIの画面試作)の作成でした。
AIを活用したアジャイル開発において極めて重要なのが、「早い段階での認識合わせ」です。AIは要件を投げると高い精度で理解したように返答しますが、実際の成果物を見ると細かな前提条件やユーザー体験(UX)に齟齬が生じることがあります。
画面という「目に見える形」を先に立ち上げることで、代表の古賀とも「この検索窓の配置で探しやすいか」「タグの表示件数はこれで適切か」といった具体的な議論が即座に可能になります。フィードバックをその場でAIに返し、数分単位でモックを再構築していく。この超高速なイテレーションによって、要件のブレを未然に防ぎました。

「司令塔・実装・QA」の3スレッドで回すAIオーケストレーション
開発プロセスを安定させるために採用したのが、単一のスレッドに頼らず、役割ごとにAIのコンテキストを分離する「3スレッド分業モデル」です。
1つのスレッド内で画面設計からコーディング、エラーハンドリングまで網羅しようとすると、文脈が肥大化し、AIの判断精度が低下したり指示の見落としが発生したりします。これは人間のプロジェクトマネジメントと全く同じです。
そこで、以下の3役を別々のスレッドで自律協調させました。
- 司令塔(アーキテクト/PM):要件の整理、タスクの細分化、進め方の決定
- 実装(エンジニア):司令塔が定義した仕様に特化し、無駄のないコードを生成
- QA(レビュー/テスター):生成されたコードの論理エラーや仕様漏れを客観的に検証
私が司令塔スレッドとディスカッションして仕様を確定させ、それを実装スレッドに渡してコードを出力。出力されたコードはQAスレッドで厳しくレビューさせ、不備があれば司令塔に戻して修正方針を策定する。
客観的な「AIによるコードレビュー」をプロセスに組み込むことで、非エンジニアであっても手戻りを最小限に抑え、高品質な実装を維持することができました。
現場が自らツールを生み出し、課題を最速で解決する組織へ
このアプローチにより、開発着手からわずか2日後には、「de.coffee」の画像素材1,536枚を対象とした、自然言語タグ検索システムの実用プロトタイプが社内で稼働を始めました。
フォルダを延々と掘り進める必要はなくなり、検索窓に「テラス」「カフェラテ」と打ち込むだけで、求める素材が即座に一覧化される。現場のリアルなペインから生まれたツールだからこそ、業務改善のインパクトは極めてダイレクトでした。

実際の画面を触ってみる
架空のデータで動くデモを公開しています。検索やタグの絞り込みを試せます(閲覧のみ)。
画像検索システムのデモを開く(架空データ)
もちろん、これを全社インフラとして恒久運用し、セキュリティや保守性を万全にするためには、専門エンジニアの高度な知見が欠かせません。しかし、「現場の課題を感じている当事者が、最短距離で動くプロトタイプを作り、共通言語として提示できる」ことの価値は計り知れません。要件定義に何週間も費やすのではなく、動くものをベースに議論をスタートできるからです。
Ansatzでは社内業務の最適化にとどまらず、クライアントが直面するマーケティングや運用の課題に対しても、AIを活用した迅速な課題実装・ソリューション構築を推進していきます。
机上の空論で終わらせず、現場の課題をテクノロジーで最速で解決する——このスピード感と実装力を、私たちはこれからの標準にしていきます。
あなたの職場には、「こんな道具があったら助かるのに」と思いながら、そのままになっている作業はありませんか?